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2004年04月10日
■雪中埋蔵■
 春の陽差しに照らされた残雪はまぶしく、跳ね返ってきた光が眼を差すようだ。森の中も春のにおいに包まれてきているように感じる。

 春になり林道も除雪され始めた。ふと除雪の壁を見ると、ゴミのように黒いツブツブが層になっている。「あっ、ケヤマハンノキだ!」 そう、すぐそばにあるケヤマハンノキからたくさんのタネが落ち、雪の層に挟まっているのだ。冬の間に、房(球果)からこぼれ落ちたタネが風に乗って飛び、雪面に舞い落ち、そしてまた雪が積もり…、ということが繰り返されたのだと思う。

 雪にサンドイッチされたタネは、雪融けとともに徐々に水分を含み柔らかくなる。雪が融け終えて、気温が上がると発芽する。そして適度の光量と、発根した根が伸びることができる地面があれば成長し始める。数十万個にも及ぶタネが飛び散っているが、これらのうち発芽成長する個体はごくわずかで、おそらく割合にすると0.1%にも満たないだろう。飛ばされた場所の様々な条件が合致しないと成長できない。

 雪中埋蔵とは、苗木を生産するときに、取ってきたタネを秋に蒔き、そのまま雪を積もらせて、雪融けととも発芽させる方法をいう。湿らせて冷暗所にタネを保管するのは、それ自体が発芽促進になるからである。

 先に述べたような自然条件下での発芽・成長の仕組みに習って苗木を生産する方法である。先人は実によく現象を観察し、生き物を扱う技術をつくってきた。その知恵に感動!

     
↑ 早春の森(芦別ダム付近で)                     (04/04/08)
↑ 積雪に挟まれたケヤマハンノキのタネ
               (04/04/08)
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