技術協力と総合判断

川喜多 二郎

…。すなわち、現場をめぐる総合的な情勢判断力のない技術協力は、人間・文化・環境を含む生きた生態系を解体しかねない凶器と化する。実際私どもの工夫した適正技術の導入をめぐって、もし総合的情報判断力を欠けば、一触即発、血の雨さえ降りかねない情勢まであったのである。

しかもその総合判断の中には、山川草木の実態ばかりか、住民の心の中まで組み込まれなければならない。その上、単に一方的に調べられる対象としての住民ではなく、彼らが私たちと肝胆相照らして参画するものでなくては意義が乏しい。ここまでゆかないと、地域の創造も保全も含み、真の精神的福祉までもたらすような地域の活性化はできないのである。

090316・1997年
川喜多 二郎(かわきた じろう),1997,「開発と文化」の岩盤を考える,1p,岩波講座 開発と文化1月報1,8pp210pp,岩波書店