中身とバランス

鷲田清一

これはまあ一般論でしかないが、ひとはじぶんについて(堅いというか)固いイメージをもっているときには、あるいはそれに熱くなれるようなものをいっぱいもっているときには、服装にこだわらないものである。逆に、漠とした不安やもやもやを抱え込んでいるときには、比較的イメージのはっきりした服を着る。つまり、内が固いと外は隙間だらけになり、逆に内がおぼろげだと外は固くなる。そういう意味では、服装でひとはなかなかよくバランスをとっている。

2007/06/30
鷲田清一(わしだ きよかず),2006,哲学を着て、まちを歩こう ファッション考現学,77-79p,284pp,ちくま学芸文庫,筑摩書房