知的であることの最低条件

福岡伸一

仮説と実験データとの間に齟齬が生じたとき、仮説は正しいのに、実験が正しくなから、思い通りのデータがでないと考えるか、あるいは、そもそも自分の仮説が正しくないから、それに沿ったデータがでないと考えるかは、まさに研究者の膂力が問われる局面である。実験がうまくいかない、という見かけ上の状況はいずれも同じだからである。ここでも知的であることの最低条件は自己懐疑ができるかどうかということである

2007/08/14
福岡伸一(ふくおか しんいち),2007,生物と無生物のあいだ, 67p,285pp,講談社現代新書,講談社