日本の学問感、西洋の学問感

山折哲雄

日本のようなこのような学問感−学問と人格は表裏一体の物であるという考え方、およびその根底にあるに違いない訓練至上主義に立つと、一つの学問的業績にたいする社会的評価の仕方にも。西洋のそれとは決定的ともいえる相違が生じてくる。西洋の近代の学問は、多くの先人の積み重ねた業績に依拠している。その先端に何か一つの研究なり理論を積みあげることができたらよしとされる。すなわち先人がやった学問的行為を一からなぞる必要はない。先輩研究者が立ったスタートラインに立つ必要はない。そうではなくて、かれが走り込んだゴールからスタートすればよい、ということだ。それが西洋的学問の考え方の基本にある。

1993/05/16・2003/09/20
山折哲雄(やまおり てつお),1993,学問の反乱,p29, pp,偕成出版社