葉っぱだより

オオバボダイジュNo.98-99 オオバボダイジュ

01/03 Oct. 2010(15 Jun.2013加筆)

シナノキ科シナノキ属(TILIACEAE Tilia)
和名:オオバボダイジュ
学名:Tilia maximowicziana
アイヌ語名:ヤイニペシ・ヤイニペシ(1)

和名の由来

和名の由来はすこぶるややこしいことになっています。ボダイジュと呼ばれる樹種には2種類あります。一つには中国原産で日本に伝えられたボダイジュ(Tilia miqueliana)で、落葉性の高木です。もう一つにはインドにある常緑性高木である「ボダイジュ(インドボダイジュ:Ficus religiosa)」です。「無憂樹、沙羅双樹 と並び仏教聖木の一つ」とWkipediaにはあります。Ficus、身近な観葉植物では「インドゴムノキ」がその仲間です。
で、オオバボダイジュは中国からもたらされたボダイジュに似ていて葉が大型なのでこの名が付いたのではないかと思います。ボダイジュが日本にもたらされたのは今から約800年前ということ(2)・(3)。それまで、オオバボダイジュは何て呼ばれていたんでしょう?
なお、シューベルトの「Lindenbaum」はTilia属で、Winterlinde(フユボダイジュ:Tilia cordata)またはSommerlinde(ナツボダイジュ:Tiliaplatyphyllos)(4)でしょう。
英名は、「linden」または「lime tree」(5)。
札幌大学の正面入り口の並木がシナノキで、学生ホールが「リンデン・ホール」。ちょっと英名が気になったので調べてみました。Winterlindeは「Small-Leaved Lime」、Sommerlindeは「Broad-Leaved Lime」でした(6)。

林業関係者では、シナノキを「アカジナ」、オオバボダイジュを「アオジナ」と呼びます(7)。

学名の由来

Tilia:f.<l.:ボダイジュに対するラテン古名。語源は「ptilon(翼)」で、翼状の包葉(bract leaf)が花梗(peduncle)に癒着しているため(8)。
異説もあります。「tilos(繊維)」によるというものです(2)。
(8)は花の形状から、(2)は「アツシ織り」で有名なように繊維質の樹皮を利用するところから、ということなのでしょう。まぁ、どちらも納得できます。

maximowicziana:おなじみ、ロシアの植物学者マキシモヴィッチの、という意味です(8)。

アイヌ語名の由来

福岡(9)ではシナノキをニペシニ(ni-pes-ni)としています。「木・もぎとった裂片・木」です。ヤイニペシは「ni-pes」に「ヤイ」がついたものと思われます。「ヤイ」が頭につく樹木は「ヤイニ(ドロノキ・ヤマナラシ)」・「ヤイヤイスス(オノエヤナギ)」などがあり、ヤイニは「ただの木」とのこと(1)。シナノキの内皮はそれから糸や布がつくられたのに対し、オオバボダイジュの内皮はずっと劣る(7)ので、ヤイニペシ(ただの・木・もぎとった裂片)と呼ばれたのではないかと想像しています。

分布

本州の北陸・関東北部・東北と北海道に分布します(10)。日頃見慣れている木なので、どこにでもあるものだと勘違いしていました。思いのほか分布域は狭いようです。

それと北海道全域に分布するかと思えば意外や意外、桧山では分布が確認されていません(11)。これも「へ~」です。

類似種

札幌にはオオバボダイジュに似ている「モイワボダイジュ」があります。葉の毛が少なく、裏面は緑色に見える(2)とありますが、私はまだちゃんとお目にかかったことはないような気がします(というか、同定できていないようです)。

オオバボダイジュの花

オオバボダイジュの花

〔参考文献〕--------------------------------------------------

(1)川村正一編,2013,新版アイヌ語の動植物探集,253pp,文泉堂
(2)上原敬二,1961,樹木大図説2,1203pp,有明書房
(3)朝日新聞社編,1968,北方植物園,330pp,朝日新聞社
(4)Gregor Aas・Andreas Riedmiller,1987,Baume(aはウームラウト),255pp,Grafe und UnzerVerlag GmbH
(5)英辞郎:
http://eow.alc.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%8E%E3%82%AD/UTF-8/?ref=sa
(6)Allen J. Coombes,1992,Word Trees The visual guide to over  500species of tree from around world,320pp,Haper Collins,London
(7)朝日新聞社編,1968,北方植物園,330pp,朝日新聞社
(8)牧野富太郎,1961,牧野新日本植物図鑑,1060pp,北隆館
(8)福岡イト子,1993,アイヌと植物 旭川叢書第21巻,267pp,旭川振興公社
(10)佐竹義輔ほか編著,1993,フィールド版日本の野生植物 木本,219pp,平凡社
(11)伊藤浩司・日野間彰・中井秀樹編著,1994,環境調査・アセスメントのための北海道高等植物目録Ⅲ離弁花植物,たくぎん総合研究所

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