葉っぱだより
No.242 ハクウンボク
02 Jan. 2014
エゴノキ科エゴノキ属(Styracaceae Styrax)
和名:ハクウンボク(オオバヂシャ・オオバチシャ)
学名:Styrax obassia
アイヌ語名:オヨペレニ(類似2)・クウト(1)
和名の由来
漢字で書くと「白雲木」。樹上に白い花を満開した様子が白雲のようであるところからいわれる(2) 。
オオバヂシャは「大葉」ヂシャ、チシャはレタスの和名。 大葉ヂシャとは?これは連想ゲームのようでした(古いか?)「ヂシャ?う~ん??」「そうだ、エゾノカワヂシャってあったよね」「じゃぁ、カワヂシャ」と調べてみると、山渓のハンディ図鑑「野に咲く花」にありました。そしてそこには『(<川萵苣>川べりに生えるチシャ(レタス)という意味でつけられた』とありました(3)。 蛇足ですが、レタスの和名チシャ(チサ)、学名Lactuca sativa、キク科アキノノゲシ属。レタスはアキノノゲシと近縁で、花はアキノノゲシにそっくりということです(4)。レタスは紀元前4500年前のエジプトですでに栽培されていて、日本には中国を通して入ってきたということです。いつの時代なのかよくわかりません。江戸時代の書物に載っていたということなので、それよりも前のことだったのでしょう。
と、ここまでさもレタスの和名チシャにもとづいて「オオバヂシャ」と名付けられたように書いてきましたが、違っていたようです。エゴノキの別名にチサ・チシャノキ・ヂシャ・ヂシャノキというのがあって、これに対して葉が大きなエゴノキに「大葉ヂシャ」と名付けられたようです(5)。
学名の由来
tyrax:m.<g.:storax(安息香)を産出する樹木の古代ギリシア名(2)。 異説もあります。アラビア語の「滴」・「涙」の意味だという説です(6)。開花する直前のつぼみを見ると宜なるかなと納得しそうです。おまけで写真を添付していますのでご覧ください。
obassia:オオバヂシャ(オオバチシャ)という和名の別名から(2)。
アイヌ語名の由来
オヨペレニ:矢を打ち込んで割る木(1) クウト:不明
分布
北海道では根室・宗谷を除く全道(7)。本州・九州・朝鮮半島・中国に分布(8)。 道内の分布は、hinoma.comをご覧ください。
http://www.hinoma.com/maps/plants/f821.htm
838400 Styrax obassia Siebold et Zuccarini (HAKUUNBOKU)
枝先
新枝は緑色で細かい星状毛が生えるが、2年枝になると表皮が縦に割れ、はがれ落ちると暗紫褐色になる(3)とありましたが、未確認です。来春の宿題にしましょう。
タネ
タネからはロウが採れるそうです(9)。「花盛屋敷からの花便り(5)」によると『種子には脂肪を多く含み(蛋白質 17.5%,脂肪油46.6%),ろうそくの材料に利用された』とあります。
□おまけ
〔ハクウンボクのつぼみ〕
どうですか、「滴」や「涙」を語源にしているというのもわかりそうな気がしません?update 2014/01/03 by S.Sonda@ARCS
added 2014/01/04
〔参考文献〕--------------------------------------------------
(1)川村正一編,2013,新版アイヌ語の動植物探集,253pp,文泉堂
(2)牧野富太郎,1961,牧野新日本植物図鑑,1060pp,北隆館
(3)茂木透 写真,城川四郎・高橋秀男・中川重年ほか 解説,2001,山渓ハンディ図鑑5 樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物,719pp,山と渓谷社
(4)森田竜義,1994,アキノノゲシ,週刊朝日百科 植物の世界,7,1-214,朝日新聞社
(5)花盛屋敷からの花便り-ハクウンボク
http://hanamoriyashiki.blogspot.jp/
http://hanamoriyashiki.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html
(6)上原敬二,1961,樹木大図説3,1276pp,有明書房
(7)伊藤浩司・日野間彰・中井秀樹編著,1994,環境調査・アセスメントのための北海道高等植物目録Ⅳ合弁花植物,244pp,たくぎん総合研究所
(8)副島顕子,1995,エゴノキ ,週刊朝日百科 植物の世界,62,6-38~6-41, 朝日新聞社
(9) 林業科学技術振興所,1994,有用広葉樹の知識-育てかたと使いかた-,514pp, 林業科学技術振興所