葉っぱだより
No.120 カツラ おまけ
29 Jan. 2011
日中韓親善のためのカツラ物語
■ポイント
①日中韓三ヵ国の温帯に分布すること
②季節感を感じさせてくれることで、古くから着目されている種類であること
③被子植物の進化の初期段階から続く種類であること
④萌芽更新を通じ、個体の寿命が非常に長いこと
■説明(物語)
カツラ(Cercidiphyllum japonicum)は、日本・中国・韓国などの東アジアの温帯に分布する落葉広葉樹高木です。北海道が原始林に覆われていたころには高さ30m、胸高直径2m もの巨木もありました。
北海道では5 月初めにまず花が咲き、やや遅れて葉が芽吹きます。蕾が開くときや芽吹きが紅色で、群落をなしているところでは山全体が薄赤く見えるほどです。黄葉も美しく、「黄葉(もみじ)する時になるらし月人の楓(かつら)の枝の色づくを見れば」と万葉集にも登場し、古代より着目されてきた木です。
北海道の先住民族アイヌの人たちにとっては丸木舟をつくるための重要な木でした。材質が柔らかく、狂いも少ないので、まな板やお盆などの日用品にも使われました。
カツラは 1 科1 属で、仲間はあまり多くありませんが、白亜紀(一億年前前後)の地層から花粉の化石が見つかるなど、古い時代から生き残ってきたことが知られています。また、1 個体で観察すると、幹が枯れても根元から再び芽を吹き育っていくという性質があるので、たいへん長寿命のようです。
日中韓三カ国にまたがり分布するカツラ。いつまでも私たちの友好の様を見守って欲しいと願います。
■参考文献
(1)朝日新聞社編,1968,北方植物園,253~256,330pp,朝日新聞社
(2)戸部博,1996,カツラ科,週刊朝日百科植物の世界,90,8-186,朝日新聞社
(3)辻井達一,1995,日本の樹木 都市化社会の生態誌,147~150,296pp,中公新書,中央公論社
(4)福岡イト子,1993,アイヌと植物,旭川叢書第21 巻,122~125,267pp,旭川振興公社